国を挙げて推進する、経済産業省のベンチャー支援策とは?



「バイ・マイ・アベノミクス」というフレーズに象徴されるように、アベノミクスの政策の1つである成長戦略は対外的にも大きく掲げられています。
その成長戦略の中でも中枢の役割を担っているのが「ベンチャーの推進」であることを、皆さんはご存知でしょうか?
今回は、日本の国内の雇用を創出し、国際競争力を再び高めていく為に政府が推進しているベンチャー支援についてまとめました。安倍首相の「日本をアメリカ並みのベンチャー大国にする」という発言が実現されるのか、考えていきましょう。

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 安倍内閣のベンチャー支援方針

まずは、安倍内閣が発足してからこれまでのベンチャー支援の大枠について簡単に見ていきましょう。
2013年の12月、茂木経済産業大臣の声かけで、今後のベンチャーのあり方を考える為にベンチャー有識者会議が設置されました。有識者の中には孫泰蔵氏やDeNA創業者の南波智子氏も含まれており、豪華なメンバーで行われました。
2014年4月には「ベンチャー有識者会議とりまとめ」が発表され、ベンチャー創造の好循環をうむための日本経済全体での取り組みを提案しました。
2015年の6月には改訂「日本再興戦略」が閣議決定され、その中にはベンチャー創造のエコシステムを構築すべく、東京オリンピックが開催される2020年に世界中から一流の経営者、起業家、機関投資家らを集めたマッチングイベント「グローバル・ベンチャーサミット(仮称)」を開催することが盛り込まれています。
以上のように、安倍内閣は日本再興にむけて、積極的なベンチャー支援姿勢を持っています。

 

経産省のベンチャー支援施策

では実際にどういった施策を行っているのか見ていきましょう。
経済産業省のホームページを参照すると、ベンチャー支援の内容は以下の6つに分かれています。

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VC増加を狙った、企業のベンチャー投資促進税制

ベンチャーファンドを通じての出資企業は、出資額の80%を上限に、 損金算入できます。
簡単に言うと、ベンチャーキャピタルに対し出資した企業はその出資額を経費として計上できるということですね。出資しても法人税を軽減できるということが企業にとってのインセンティブとなっています。
これは、企業によるベンチャーキャピタルへの出資が加速することを狙った政策であると言えます。

新事業創出の為の目利き、支援人材育成事業

こちらは日本からグーグル、アマゾンのような巨大なベンチャーを生むために、トップクラス人材の支援を通じて事業の成長をサポートする制度です。
以下の図は海外と国内のメガベンチャーの差を如実に表していますね。

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政府は支援対象となるシーズ企業に対し2000万円を上限とする支援を行います。

こちらの支援事業のポイントはトップレベルの人材による支援のネットワークが構築されていることですが、ここでも「オープンイノベーション」の考えが生かされています。

個人投資家への優遇、エンジェル税制

こちらは平成9年から存在する、対象となるベンチャー企業に対し出資した個人投資家(エンジェルと呼ばれる)が税制上の優遇を受けられる制度です。優遇を受けられるタイミングは2度存在します。
① 投資時点
所得税における2通りの優遇措置があり、投資家はそのうち自分に適した方を選択します。
一方はベンチャーへの投資額から2000円を差し引いた金額が総所得額から控除されるというもの。控除を受けられる額は、総所得の40%に当たる金額か、1000万円のいずれか低い方となります。
もう一方は他の株式を売却して得た利益から、ベンチャー企業へ投資した金額の全てを控除するというものです。こちらは上限がありません。
② 株式の売却時点
投資したベンチャーの株を上場前に売却し損失が出た場合、またベンチャーが破産して株式が無価値になってしまった場合、3年間に渡って他の株式の売却益との相殺が可能となります。

所得税の控除や、投資リスクの削減などの効果があるエンジェル税制は、個人投資家のベンチャーへの投資を加速させる期待が込められています。

女性、若者、シニア起業家支援資金

こちらはその名の通り、女性や若者、シニアの起業家に対して資金面での支援を行う制度です。
対象となるのは女性・30歳未満・55歳以上の起業家のうち開業して7年以内の人で、日本政策金融公庫からの低利の融資を受けることが可能です。

起業家教育推進事業

起業家を志す学生の支援や、起業家教育に取り組む大学・大学院教員の両面から、起業家教育の推進を行っています。
主な活動としては、年に一度、起業家教育を実施する大学・大学院に所属する学生を対象とした全国規模のビジネスプランコンテスト「University Venture Grand Prix(UVGP)」が挙げられます。
このグランプリでは、学生のビジネスプランに対してだけではなく、起業家教育に関する講義を行っている大学・大学院教授に対する表彰も行われるそうです。
従来の大学教育に変革を起こすべく活動しているようです。

ベンチャー創造協議会

「日本再興戦略」で掲げられた産業の新陳代謝とベンチャーの加速を実現するべく設立された協議会です。
既存企業とベンチャー企業の連携を強化することを主眼としており、マッチングイベントや提携・M&Aの推進、社内起業の促進、「日本ベンチャー大賞」の開催、シリコンバレーへの人材派遣など多岐にわたる活動を行っています。
活動の一つには先ほども出てきたオープンイノベーションの推進も含まれており、いかに政府がこの姿勢を重視しているかが分かります。

 

本当に効果があるの?

ここまで経済産業省のベンチャー支援策を見ていきました。
ここまで見ていくと、安倍内閣は前例になくベンチャー支援を重視していることがわかります。これまで海外に対してとっていた遅れを取り戻し、日本を再興すべく、様々な税制上の優遇措置などの具体的施策に至るまで様々な活動でベンチャー推進を行っています。当然一定の効果は上がってくことでしょう。

ただ、これからシリコンバレーやイスラエルのような起業大国になるにはいくつか課題もあります。
日本総研のリサーチでは、前述のような取り組みを効果的に推進していくためには数点課題があると述べています。
一つめは、起業家を志す層が薄いこと。日本生産性本部の「新入社員春の意識調査」によれば、「社内で出世するより自分で起業して独立したい」と答えた新入社員 の割合は、年々低下しており、2014 年度は 11.8%と過去最低だったそうです。
二つめは、ベンチャーの自立支援が不足していること。マッチングなどにより多くのベンチャーをうむ環境は整ってきていますが、事業を成長させていく上で不可欠となる販路開拓やマーケティングなどへの支援が不十分であり、販売可能な段階から次のステップに進むことが困難な状況にあると言えます。
前者の問題に対しては、想像力や柔軟性、自発性など起業家資質を育むための幼少・少年期における早期教育が求められます。後者の課題に対してはマッチングにとどまらない、事業成長のための具体的支援の拡充が求められるでしょう。

 

まとめ

イスラエルの記事でも説明しましたが、イスラエルなどの起業家大国は、会社を立ち上げ、大きくし、売却して、再び起業する、といったようなことが当たり前となっています。
日本はまだこのような環境には程遠いですが、オープンイノベーションを推進し、税制などで起業に関するリスクを低減し、さらに教育で挑戦意識を育んでいけば、起業文化を根付かせていくことも可能でしょう。
政府の立場だからこそできる大きな動きも存在するはずなので、これからの動きにも期待しましょう!

【参考】
経済産業省ホームページhttp://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/
日本総研レポート
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/7537.pdf