電子回路印刷技術で新産業の創出に挑む 気鋭のハードウェアベンチャー・AgIC株式会社インタビュー



2014年に創業をしクラウドファンディングプラットフォームKickstarterにおいて二度の資金調達を果たした新進気鋭のハードウェアベンチャーのAgIC株式会社。

今回はマッキンゼー・アンド・カンパニー出身で代表を務める清水様に同社がコア事業として取り組み、今後新産業となりうるプリンテッド・エレクトロニクス市場の展望と、日本のモノづくりが抱える課題について伺いました。

AgIC事業領域と今後の展望

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toCからtoBへ

「AgICはこれまで回路マーカーやプリンターといったtoC向けのプロダクトの開発に注力してきました、toC領域については来年から小中学校への教育教材としての導入が決定しています。

しかし今後は拡大が予測されるtoBの産業向けプリンテッド・エレクトロニクス市場により注力していきたいと考えています。」

10年後プリンテッド・エレクトロニクス市場は9兆円規模の見込み

「プリンテッド・エレクトロニクスといってもあまり馴染みがないかもしれませんが、電子回路を印刷で製造してしまうという、現在世界的には非常に注目されている領域です。
10年後には9兆円規模の市場が形成されると見込まれており、パソコンやスマートフォンという新しい概念により市場が形成されたように、今までの既存産業そのものに変革を起こす市場といえると思います。

将来9兆円規模の市場になった際、例えばプリンテッド・エレクトロニクス市場のビッグ3、といったポジションを担いたいと考えています。」

3Dプリンターの二の舞いを演じない

「日本のモノづくり産業は衰退したとよく耳にしますが日本はまだ特定の領域では高い技術力を持っています。しかし一方で日本ではスタートアップより大企業主導での市場開拓が主なため、全く新しい領域の開拓を行うのが難しい環境であるのも事実です。

これまでも例えば3Dプリンターなどは、技術自体は日本が劣っていたというわけではないにも関わらず、技術を応用し製品に仕上げるという点においてスタートアップ主導で技術開発を行ったアメリカに遅れを取り市場のシェアを奪われています。

新技術を開発するだけでなく応用先を模索することは大企業としては難しいので、今はまだ見通しが立っていないプリンテッド・エレクトロニクス市場で我々スタートアップ主導でリスクを取り応用先を模索していく必要があると思っています。」

今後の日本のものづくり産業を考える上で重要なことは

優秀なエンジニアこそスタートアップへ

「スタートアップ界隈、特に技術オリエンテッドな企業は高い技術力を持ったエンジニアを必要としていますが、特にハードウェアエンジニアにとって、日本にはまだまだスタートアップというキャリアケースが少なく、ファーストキャリアとしてスタートアップを選択するのは難しいというのが実感です。

今はメーカーなどで生涯務めるのが1つのサクセスケースとされていますが、一方でスタートアップについては不透明な部分が多い状態です。スタートアップで成功することももちろんですが、一度失敗してもスタートアップを渡り歩いて最終的にどうにかなったという例が増えると、ハードウェアエンジニアのキャリアとしてスタートアップを選択することも一般的になるのではないでしょうか。

成功を収めたハードウェアスタートアップに、どういったエンジニアが入社してどういった仕事をしているのか、顕在化し認知されるようになるとハードウェアエンジニアのキャリアの幅も拡がるのではないでしょうか。」

ベンチャー企業単独より、大企業との協業を

「もちろんものづくりに対しての拘りはありますが、日本のものづくりの国際的な競争力が今後劇的に上がっていくのは難しいと思っています。ものづくりに必要な基礎技術の多くは既に成熟しており、そうなると技術的な優位性は少なくなっていきます。

以前は家電を作ることのできる企業といえば巨大メーカーに限られていましたが今はそうではありません。むしろ新しい応用や技術分野にどう取り組んでいけるかといった点が重要になってくると考えています。

そのための1つのやり方が、スタートアップを利用して新しい技術の開発やマーケットの開拓を行うことではないでしょうか。市場の見通しがまだ立っていない中で、大企業が新しい技術、新しい市場に参入するのは難しいのでそういったときベンチャー主導で技術の応用を模索する流れが一般的になればと思います。

また、大学発ベンチャーについても、同様に企業との連携が大事だと思っています。一般に考えられているような、大学の技術がそのまま競争力の源泉となり、単独で戦っていける、といった事例は必ずしも多くないと考えています。そもそも、ベンチャー企業では経営方針が変更されることもしばしばで、創業時の技術がそのままコア技術であり続けるとは限りません。むしろ大学というオープンな環境をうまく利用し、技術に関してもいかに大企業と連携していくかが重要だと考えています。」

積極的に大企業との連携を進めたい

「我々も三菱製紙さんと資本提携をし、材料製造などで協力頂いています。大企業の研究所には個別で見れば非常に良い技術が眠っていますが、企業としてブランドをつけて製品化していくにあたっては新しい技術を使いリスクを背負うことは難しいというのが現実でしょう。

新しい技術には当然リスクはつきものです、市場の見通しも立ちませんし不具合が発生する可能性もある、そういったときにベンチャーがリスクをとって積極的に技術開発を行い市場に展開していくことが重要になると思います。

具体的に我々は、大企業出資のマッチング系のイベントに積極的に参加することやVCを通して大企業との接点を持つといった努力により、成果を得られています。」

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締めくくり

これまで新技術の開発において強みを持っていた日本企業ですが、市場では後手を踏んできました。

今後日本初技術で市場を作りシェアを獲得するためには、キャリア選択としてハードウェアスタートアップが一般的となり優秀な人材がAgICのような企業に集まるとともに、大企業の技術をベンチャーがリスクを持って実行できる環境を整えることが重要になりそうです。