研究効率の最大化を通じて世界の革新を目指す東大発ベンチャー・エルピクセルインタビュー



数々の東京大学発のベンチャー企業が集まるイノベーションの砦、「東京大学アントレプレナープラザ」。

その5階に、画像解析の技術をコアに先端技術 を有し、「研究効率の最大化」という変わった側面から豊かな社会を目指す東大発ベンチャー、エルピクセル株式会社はあります。

今回は代表の島原様に、研究に対する考え、学問とビジネスをどういう形で融合させるかといったお話を、社長と研究者双方の視点から存分に語っていただきました。

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事業内容

「研究者が作業者になっている現状を解決したい」

ー まずは貴社の具体的な事業内容について教えてください。

「まずはじめに、我々のコアバリューは、医療、製薬、農業などのライフサイエンス分野における研究の画像解析ソフトの開発です。

2000年の研究室発足当時からバイオイメージングの分野を切り開いてきたことが発端です。

日常生活でも10年前に比べてスマホで撮影した画像のデータ量は膨大に増えていると思います。

それは研究分野でも同様で、顕微鏡、MRI、CTなどの撮像装置の性能は向上していて、今までになくデータが増えています。

すると、『画像は取れるけど、それをどう処理すればよいのか』といった問題が発生してきます。

従来の手作業だと、1日で取得した画像を1週間かけて処理しなくてはいけないような状況が起きたり、研究者がただの作業者と化してしまいます。我々はこうした問題を解決するために画像解析ソフトウェアを提供しています。

このソフトウェアに対する共同研究の需要は大学の時から多く、数人規模の研究室では処理しきれなくなったこともあり、供給能力を増やすために当時の助教とポスドクと三人でスピンアウトして会社化しました。会社設立時、研究室が抱えていた共同研究の件数は40件もありました。」

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toBの研究開発から、toCの教育活動まで行っている

「現在この画像解析ソフトウェアを用いて行っている事業としては、『研究開発』と『教育』の二つがあります。」

・研究開発

「生物学と情報学の両方のバックグラウンドをもつ我々は、 それぞれのお悩みに合わせたオーダーメイドの画像解析ソフトウェアをワンストップで開発しています。

例えばある研究機関とのお付き合いの中で、細胞の状態の判定をするためのソフトウェアを開発したのですが、これまではこの判定はパートのおばさんが朝から晩までやっていたような状態です。(笑)

これを機械学習の技術を用いて自動化し、本来はトレードオフであるはずの研究の高速化、高精度化を同時に解決しました。

また、人工知能を用いたがん診断支援ソフトウェアの開発をしています。国立がん研究センターと東京理科大学の共同研究で生まれた生物画像自動分類の特許を活用し、がん診断支援ソフトウェアの開発を進めています。ミスを減らし、診断効率を向上させることを目指しています。このような汎用的なソフトウェアの開発もいくつか進めています。」

・教育

「画像解析ノウハウの冊子を製作し、ライフサイエンス研究者向けの教育活動を行っています。

ライフサイエンス分野は画像解析が非常に重要であるにもかかわらず、大学側も教えられる人がいないため、解析に関するノウハウが全くないまま画像解析をやらされるといった現状があります。

そこで我々がライフサイエンスと、画像解析の橋渡し隣る存在になるため業界をリードしていくためにAdobeと協力して教育活動を行っています。

今年は全国60大学で講義をしました。アンケートでも『目からウロコの情報が満載だった』などの高評価をいただいております。

『LP-tech』という、画像処理スキル教育のためのメディアを運営するなど、ウェブでの情報発信も行っています。」

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研究の効率化の先に見据えるビジョン

「豊かな社会は研究者の頑張りがあったからこそ存在する」

ー 研究の効率化の先にどんなビジョンを見据えているのでしょうか?

「我々は、現在の豊かな社会は、研究者が頑張ってきたからこそ存在しているものだと感じています。

研究のスピードと生活の豊かさは相関があり、研究が加速すればその分助かる人が増えるのです。

しかしこの地球には未だに治せない病気、辛い抗がん剤副作用、食糧問題など解決できていない問題もまだまだあります。

これらはいずれ解決される問題かもしれませんが、もし今の研究スピードが10倍に加速すれば、このようなさらに豊かな未来の実現も10倍近いものになります。

エルピクセルの力で、研究者のクリエイティビティを発揮させ、遠い未来を近くしたい、と考えています。」

 

大学の研究をどうビジネスにつなげるか?

「産学連携のロールモデルになりたい」

ー 大学の研究を実社会に活かすためにはどうすれば良いとお考えでしょうか。

「現実として、学問とビジネスには大きな隔たりがあります。研究室の間では、就職することが負け組のように扱われることまであるほどです。我々はこうした隔たりをつなぐブリッジ役となり、産学連携のロールモデルになりたいと考えております。

日本にはシリコンバレーのようなエコシステムがまだないため、参考にできる成功例がないというのも大きな問題だと思っていますので、そこを我々がリードすることで、研究をビジネスに活かす新たな文化を興していきたいと思っております。

例えば従来の大学、企業の研究室の間に位置するような独自の研究所を設立する構想もあります。

何と言ってもイノベーションは大学中心に起こるべきものだと感じているので、ゆくゆくは現在の事業にとどまらず、いろいろな研究をビジネスにつなげる役割を果たしていきたいです。」

 

まとめ

研究を経験したことのない方などは、研究という世界は馴染みが薄くどう現実に役立っているのかわからないと感じることもあるかもしれません。

しかし今回取材させていただいたエルピクセル様は、また研究効率の最大化にコミットすることで研究者の創造性を最大限に引き出し、さらに自身が研究とビジネスの間の橋渡しとなることで実用化を進めていこうとするこれまでにない企業です。

お話を聞いていて、代表の島原様からは、「研究こそ人類の生活を豊かにする」という確固たる哲学を感じました。同社が大学とビジネスを繋げ、誰もが幸福な社会を実現するリーダーとなることに期待です。