社会インフラを支える産業ロボットの市場を開拓する東工大発ベンチャー・株式会社ハイボットインタビュー



 

小径配管の点検、災害現場、高圧電線の点検用ロボットなどの、社会を支える産業ロボットを開発してきた、東京工業大学発ベンチャー、株式会社ハイボット。今回は株式会社ハイボットの創業メンバーであり、代表取締役を務められたこともある北野菜穂様(現管理部長)に、創業の経緯から今後の展望までのお話を伺いました。

 

研究室のロボット技術を世界に広めるために創業

創業の経緯を教えて下さい。

「当時、ハイボットの母体となった東京工業大学の広瀬・福島研究室(以降、広瀬研)にミケレ・グアラニエリとパウロ・デベネストが留学生として来ていて、もともと彼らは日本のロボット技術をものすごく面白いと思っていました。当時、広瀬研は学生の人数が多いということもあり、非常にロボットの製作がアクティブで、年に複数の新しいロボットが開発されていました。しかし、このように作られるロボットはアカデミックな領域にとどまっていました。2人の留学生はこの広瀬研で作られるたくさんのロボット、それからこれらのロボットを開発する技術を、日本だけでなく世界で活躍させたいと考えて、世界に広げて行くんだったら会社があったほうがいいよね、ということで創業に至りました。」

「具体的に『どのロボットをどこの領域で量産したら事業化できる』のような事業計画を立てていたわけではなかったのですが、とにかくこの技術を世界に持って行きたい、卒業まで待てない、ということで、2人の留学生は在学中に起業することを決めました。彼らはまだ留学生だったので、起業について指導教員の広瀬先生と福島先生に相談したところ『面白そうだから一緒にやろう』という話になり、広瀬研公式の大学発ベンチャーとして創業することになりました。」

 

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ロボット開発の哲学 “ロボットが使われるべき場所”

危険作業に特化したロボットの開発をされているイメージがありますが、どのような思いがあるのでしょうか?

「危険作業に特化したロボットという認識はありません。開発するロボットに対してどのような思いがあったかというと、創業メンバー全員が『ロボットが本当に使われるべき場所があるはずだ』という哲学や思想のようなものを持っていました。ヒューマノイドロボットがダメだと言っているわけではないですが、『ヒューマノイドロボットが真に社会の役に立つロボットの形ではないはずだ』という思いが強かったです。社会の役に立つロボットは、人間の体を模倣するものではない。また、人間が行けない場所に到達して活動するロボットだ、と考えています。」

 

ロボットの新しい市場を掘り起こす

ベンチャー企業でのロボット開発の魅力とは何でしょうか?

「私自身がエンジニアではないということと、大企業のロボット開発をよく知らないという前提でお答えします。昨年はじめて中途採用をオープンしたのですが、募集した枠に対して非常に多くの方に応募して頂き、日本のエンジニアの中には『いつかロボットを開発してみたい』と思っている方が多いのだなと感じました。特にハイボットで開発しているような、自立移動するまさにロボットらしいロボットは、大手の企業では開発する機会が少ないのではないかという印象を受けました。」

「私達が開発しているロボットのマーケットは、本当に今後大きくなるかどうかわからないと言われています。それでも私達がなぜこの分野に挑戦しているかというと、マーケットがないからやらないのではなく、今ないマーケットは自分達で掘り起こすしかないと思っているからです。マーケットのニーズが無いのは、そこに対応できる技術がなかっただけで、技術があるとなれば潜在ニーズを満たすことができます。そういった意味でロボットはまだまだこれからのマーケットなので、エンジニアにとってわくわくできる環境かもしれません。」

 

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社会を支えるロボットを開発し続けるイノベーターでありたい

最後に、今後貴社のロボットが活躍できると考えている領域を教えて下さい。

「2014年から投資も受けて、自社製の事業での成長を考えています。参入するマーケットも具体的に構想しています。今一番力を入れているのは、小径配管の中を移動しながら点検するロボットです。配管というと小さなマーケットに聞こえるかもしれませんが、国・地域問わず配管がない場所はないので、とても技術の転用がしやすく、大きなマーケットであると考えてここを狙っています。小径配管とは3インチから6インチ程度のものを指していますが、世界中でこのサイズの配管の中を移動できる装置は、研究レベルではいろいろなところで開発されていますが、3~4インチは実用レベルのものはまだありません。ハイボットはその領域で一番はじめのイノベーターになれると考えています。当然コンペティターとなる既存技術はあるのですが、それらにできない付加価値を提供していきたいです。」

「もう一つ、マクロな視点でお話すると、私達はロボットには使われるべき場所があり、ロボットは社会を支えるところで活躍する技術と思っています。私達は、社会インフラ設備などを維持するために必要なロボット技術を、世の中に出し続けられるイノベーターでありたいと考えています。」