ようこそカオスと狂気の世界へ!
先日、「ベンチャー転職バイブル」というコラムを書いた。これはその続編だ。
あなたはいざベンチャーに転職して、いよいよ初出社日を迎えようとしている人かもしれない。はたまた、カオスの荒波に揉まれて、なにかの拍子にこのページにたどり着いた人かもしれない。これはそんなあなたに捧げるラプソディだ。
なんでキャリアエージェントが転職後のコラムなんて書いているのかというと、それはあなたに成功してもらいたいからだ。
ベンチャーに転職して水を得た魚のようにイキイキと働いている人を数多く見てきた。
一方で、「なんだこれは!?」とカオスの荒波のなかで、溺れそうになっている人も数多く見てきた。
一人でも多くの人が、ベンチャーという環境を愛してくれるように、その場を好きになってくれるように、そしてそこでのキャリアがより良いものとなり、あなたが世界を変えてくれるように、いつもの通り青山のオフィスで一人筆を執っている次第だ。
ベンチャーといえど業界も業種も様々だ。ただそこで活躍するには共通したコツのようなものがある。
あなたが巨人の肩にのって、ベンチャーでのキャリアをスタートできるように。
社会人1日目の昼。買ってこいと最寄りの書店に走って買いにいった『社会人一年目の教科書』に捧げよう。
追加でのご質問や、追記して欲しいものがあれば、遠慮なく下記までお問い合わせください。
career-ask@slogan.jp
【INDEX】
1.信頼とは貯金だ。信頼残高を獲得する
弊社スローガンには「餃子合宿」という謎の儀式がある。ただ宇都宮に行って餃子を食べる。そしてなぜか風呂に入る。そこで先輩社員にこう言われた「いいか、信頼っていうのは貯金残高みたいなものだ」。まるでゴッドファーザーだ。
ベンチャーって実力の世界なんでしょ?ただ、ちょっとまって欲しい。あなたの実力を十分に発揮するためにも、信頼残高について知っておいた方がいい。
仮に浮気ばかりしている男がいるとしよう。あなたは不幸なことにその彼女だ。
「ちょっと、週末旅行いってくる」そう男が言ったとしよう。あなたはなんて言うだろうか。
「どこにいくの?」「誰といくの?」「何時に帰ってくるの?」もしかすると軍隊さながら、定時連絡さえ要求するかもしれない。なぜだろか。そう、信用が無いからだ。
仕事だって同じだ。あれやこれや言われるのは、上司が嫌なヤツだからじゃない。信用されてないだけだ。「信用してくれよ!」といったところで無駄だ。じゃあ、どうすればいいのか。小さな約束を積み重ねるしかない。遅刻をしない、言われたことをきちんとやって報告する。そうやって小さな信頼を貯金しながら、大きな信用を獲得していくしかない。自分がやりたいようにしたいなら、信頼関係をつくることだ。そして、信頼関係をつくるには、相手にGiveするしかない。
小さな仕事にも手を抜かないことだ。意外にもいろんなところで人は見てくれている。
とある知人がせっかくベンチャーに入社したのに、お客様の小売店に出向となった。
なんと最初の仕事はトイレ掃除だ。普通なら、ちくしょー転職だ。ただ、その人物は毎日丁寧に日報を書いた。その店舗の何が課題か、自社製品が改善するべきポイントはなにか、お客様である店舗スタッフの目線で毎日丁寧に日報を書いた。
それを見ていたのは、その会社のCEOだ。見事、トイレ掃除から肝入りのプロジェクトに栄転となった。日々の仕事のなかで信用を積み上げる方法はいくらでもある。
2.素直さとコーチャビリティを武装する
もちろん初期値は大切だ。いまのあなたがどれくらい優秀かということだ。ただそれ以上に大事なことは、あなたがどこまで成長するかということだ。とある起業家が言っていた、学べないプライドはクソだと。
どれだけあなたのIQが高くたって、愛嬌と素直さのあるやつには敵わない。きっとあなたの職場にもいるはずだ、なんでもツッコまれて、イジられたりするキャラクターが。学校ではあまり羨ましくないポジションかもしれないが、あなたがベンチャーに転職したならそのポジションは譲らない方がいい。フィードバックを得られなくなったら、あなたの成長はそこまでだ。
成長というのは、打席数×打率×飛距離だ。
ツッコまれれば、学びという打席に立てる。それをどれだけ生かせるかが打率だ。そこからどれくらい学べるかが飛距離だ。コーチャビリティが高い人は、多くの打席に立つことができる。そして、素直な人はそこから行動を変えることができる。
フィードバックする側の上司だって憂鬱なものだ。自分の仕事で忙しいし、あなたのために時間をとってフィードバックしている。ただ、フィードバックされたあなたが、世界の終わりのような表情をしていたら、二度と上司はフィードバックしないだろう。フィードバックを学習機会として喜ぼう。足らぬ喜びを知るだ。
とある起業家がサマーインターンシップの説明会を学生向けにしていた。プレゼンが終わり「なにか説明会の改善点はありましたか?」と言われたので、2-3フィードバックを返した。次の説明会で、その改善点は見事に修正されていた。そしてまたプレゼンが終わると、「なにか改善点はありましたか?」と聞くのだ。
私は社会人駆け出しのくそガキ。相手は有名ピッチコンテストの優勝者だ。
その人は、著名な経営者からも投資を受けていて、投資家にも同じように振る舞っているという。その会社は今では上場企業だ。本当に優秀な人ほど、成長機会を求めているものだ。そうプライドよりも。
「本当に高いプライドは人を地道にさせる」と、ちはやふるにも書いてあった。
3.当事者意識と金銭感覚
あなたが家に帰宅し、玄関にゴミが落ちていたとしよう。きっとあなたは拾ってゴミ箱に捨てるはずだ。では、それが社員数10,000人の大企業のオフィスフロアに落ちているゴミだったら、あなたは拾うだろうか。きっと私は拾わない、そんな人はきっと熱狂的なパタゴニア信者だ(ちなみに私は熱心なパタゴニアユーザーだ)。
いくら当事者意識を持てといったところで、そんなことは不可能だ。
ただ、これが金銭感覚に紐づくと少々厄介だ。あなたはベンチャーで働く社員だ。1円だって無駄にするべきじゃない。もちろんオフィス環境は大事だ。誰だってハーマンミラーに座りたい。ただ、良い椅子に座った結果として、資金繰りがショートするならそれは避けるべきだ。
あなたのオフィスの坪単価はいくらだろうか。いまあなた一人を雇うためにいくらかかっているだろうか。あなたがいま取り組んでいる業務は、どのように売上に結びついているだろうか。いまあなたが使おうとしている1時間は、会社の事業にどのように貢献するだろうか。いまのあなたが組織の赤字に貢献しているならば危機感をもった方がいい。金銭感覚を知ることで芽生える意識もある。正しい金銭感覚は、信頼残高を増やす。
あなたの財布のなかの1円と同じように、会社の1円を尊重しよう。あなたの会社がもし、まだ損益分岐を超えておらず、投資フェーズにある会社ならばなおさらだ。そのお金は人様のものなのだから。
とある女性起業家がトイレを済ませ、備え付けのペーパータオルで手を拭いていたらしい。そうしたら、同僚に手なんて振って乾かせと諭されたという。これはなにを隠そう、ディー・エヌ・エー創業者・南場 智子氏のエピソードだ。偉大な会社は、金銭感覚も偉大だ。
4.環境のせいにしない。ただ理性を失ってはいけない
環境のせいにしない。よく言われている言葉だ。
なぜだろうか。それは、ベンチャーやスタートアップが、そもそも不条理なものだからだ。そもそもの環境設定が「やって意味がある」と断言じづらいような不確実なものだったり、「自分のやる必要がある」という合理性のあるものじゃないからだ。環境のせいにしたら、一歩も動けなくなってしまう。学び、前進する機会を失ってしまうからだ。ここは1000人の豪華客船じゃない。4人乗りのボートだ。ないものはない、必要なものをつくるのはあなたの仕事だ。与えられた環境を嘆くよりも、いまの状況を楽しんだ方がいい。
世界は残酷だ。せっかくリリースしたサービスが、突如として現れた超大型巨人に蹂躙されるかもしれない。ただそこで、人間は巨人には勝てないと絶望しては始まらない。その環境をどうひっくり返せるかだ。それを考え、実行に移すのがおもしろいのだ。
あなたはとあるサービスのセールス担当だとしよう。お客様へのプレゼンの感触は良好だった。市場環境も精緻に分析した。競合との比較や優位性の説明も完璧なものだった。ただ、突如としてあらわれた競合に、経営者同士のつながりだから、という理由で売上を奪われたとしよう。
運が悪かった。そんなシナリオは読めなかった。ただ、それで終わってしまっては前進の余地がない。せっかく転んだのだから、何か拾って持って帰ろう。
「顧客セグメントに対して、自社サービスの優位性は本当にあるのだろうか」
「お客様のニーズを本当に汲みきれていたのだろうか、もしかしたら経営層には別のニーズが隠されていたのではないか」
「競合より先にトップセールスを仕掛けることは出来なかったのだろうか」
その結果に、もし再現性があるならば、それは手を打つべきだ。
ただ、ときに自責根性がひねくれて、まったく理性を失ってしまうケースもある。
「もう、それは私が悪いんです、、」「それって、何が悪かったんですか?」「いや、とにかく私が悪くて、、」
これじゃドメスティック・バイオレンスだ。合理性も再現性も前進もない。内省・反省は重要だ。ただ、メンタルを引っ張られるのは良くない。
学べることが学べたら、それでおしまい。あとは一杯飲んで、次の準備に集中しよう。
5.まずはGiveしよう。Can→Must→Willの順番で仕事をする
入社したらまずは迷わずGiveしよう。あなたはリスクを負ってベンチャーに飛び込んだのだろう。望んでいるキャリアプランもあるだろう。
ただ、安西先生も言っていた。あなたのためにチームがある訳じゃないと。
あなたが、やりたいことをするためにも、まずは信頼残高を獲得することだ。そのためにはGiveするしかない。
じゃあ、どうやってGiveすればいいのだろうか。まずはあなたが出来ること、Canからはじめよう。前職の経験やこれまで培ってきたスキルで、あなたが会社のためにできることがあれば迷わず捧げよう。
とある広告代理店に人材業界から業界未経験で入社してきた人がいた。その人は、広告もマーケティングも未経験だ。ただ前職では沢山の研修商材を取り扱ってきた。その人は、未経験者として研修を受けながら、その研修をより良くするための改善点を細かく書き留めておいたという。そのメモは人事・経営チームから称賛された。「すごい新人が入ってきた」と。あなたにとって、転職先での業務ははじめてのことかもしれない。ただ、いまのあなたでも貢献できる仕事はある。私が入社したとき、できることはごみ捨てと弁当を買いに行くことくらいだった。それよりもきっとマシなはずだ。
Canで貢献したら、次はMustだ。あなたの能力は会社に必要とされている。
だからあなたは、そのポジションでオファーをもらったのだ。与えられたポジションで合格点をとるのは当たり前だ。ただ、会社として取り組まなければならないMustな仕事は、まだまだ沢山転がっている。
上司や経営者が、その人がやらなくてはならない理由はないのに、時間を割いてしまっている業務はなんだろうか。もし、あなたがその業務に対して経験がなくっても構わない。いまから書店に駆け込んで書籍を10冊読めばいいだけだ。それで、大抵のことにはキャッチアップできる。別に広報は自分の仕事じゃない、みんながそう思っているから、上司や経営者が代わりにやっているのだ。
仕事の奪い方も重要だ。マネージャーに対して「なにかやることはありますか?」と聞いても、「大丈夫」と返ってくるのがオチだろう。あなたに仕事の依頼を丁寧できるほど、上司は暇じゃない。
仕事を取りに行きたいなら、前提条件が擦り合っていることをアピールしながら、具体的に伝えることだ。
「○○さん、来週の△△社とのアポイントなんですが、来期に向けての追加提案ですよね。前期の振り返り資料つくっておきますよ。●●の▲▲をまとめとけばいいんですよね」そんな具合だ。
上司から嵐のように仕事が降ってくるようになったら、それはあなたの信頼残高が積み上がってきた証拠だ。
Mustまできたら、次はWillだ。ただ、きっとその頃には、あなたには「この会社をこうしていきたい」という意志が芽生えているはずだ。
そして、あなたの信頼貯金が貯まっているならば、きっと上司はこういってくれるだろう「好きにしていい」と。そうなれば仕事は100倍おもしろい。あとは思う存分やるだけだ。
6.仕事の粒度になれる。課題→目標→施策→タスク
ベンチャーと大企業との何が違うかと聞かれたら、依頼されるタスクの粒度が違うと答えるだろう。ベンチャーで依頼されるタスクは何かと抽象的で粗雑だ。
あなたが友人と旅行を計画したとしよう。
そうしたら友人に「じゃあ、パナマ集合ね」と言われたら友人の人格を疑うだろう。
普通なら「●●時に成田空港に集合、○○時発の△△行きの飛行機に乗るから、パスポートと3泊分の着替えを忘れないでね。意外と現地のホテルは寒いから上着も忘れずに」となるはずだ。
ただベンチャーでの仕事は「パナマ集合」だ。なぜだろうか。
それは、既存業務と新規業務とでは、業務の依頼の仕方が異なるからだ。たとえば、あなたが企業で一人目の人事採用担当者として雇われたとしよう。「じゃあ、あとはよろしく」とCEOに言われる訳だ。当然「なにをすればいいんですか?」となる。
ただ、そこからはあなたの仕事だ。なぜならば、CEOは人事と採用のことがわからないので、あなたを雇ったのだ。何をするかはあなたが考えることだ。
新規業務は、社内で当該業務の経験者がいない。だから具体的な指示を仰いでも抽象的な回答がくるだけだ。「来期の売上と利益を達成するための人員を確保してください」といった感じだ。別にCEOはあなたが嫌いなわけでも、嫌がらせをしたいわけでもない。ただ、本当に知らないだけだ。
既存業務はその逆だ。すでに誰かがやっていること、出来ていることを引き継ぐのだ。パナマに旅行をしたことがある人に、パナマへの入国方法を聞いて、きちんとそれを再現することが求められる。そこでは仕事の依頼は具体的な粒度でやってくる。それが出来るのは、依頼主がすでにその業務の経験者だからだ。
仕事の粒度を下記のような粒度で分類するならば、社内で誰もやったことがない業務を依頼された場合、タスクベースで依頼が飛んでくることはまず無いだろう。
・課題:そもそも何が問題なのか。問題を定義する
・目標:課題を解決し、達成可能な目標を設定する
・施策:目標を達成するためのアクション、打ち手を検討する
・タスク:アクションを完了させるために遂行するToDO
ベンチャーで働くのなら、この粗雑さを楽しもう。パッケージされた旅行ツアーに参加するよりも、バックパック旅行を計画する方がおもしろい。その土地に行くのは初めて。移動手段もよくわからない。初日から上手くいかないこともあるだろう。
ただ、目的地で見る景色は少し綺麗に映るかもしれない。この手触り感がベンチャーでの醍醐味だ。
7.学び続ける。内省と勉強を馬鹿にしない
とある経営者が言っていた「勉強しかできないやつ」と馬鹿にするやつは勉強を馬鹿にしていると。もちろん、お勉強だけしているのは論外だ。ただ、勉強を馬鹿にしない方がいい。
あなたが仮に社内で新しくWebマーケティング業務を担当することになったとしよう。
とりあえず、GoogleAnalyticsというものにログインしてみる。そこで格闘すること1週間。あなたがただ画面だけをみて学習したとするならば、そこで得られた学びは、きっと入門書籍の最初の10ページにすべて書いてあるはずだ。
確かに経験は重要だ。ただ、人が学べるリソースは自身の経験からだけじゃない。人の学習に占める経験の割合は7割程度だ。残りの2割は人からの学び。1割は知識、つまり勉強だ。この2割と1割を少ないとみるか、チャンスと捉えるかだ。あなたがその3割を捨てるならば、あなたは上司やライバルより数多くの経験を積まなくてはならない。
ただし1日は24時間しかないし、たいていのビジネスタイムは18:30には終了する。
まずは一つの事象からいかに多くを学べるかだ。振り返りを習慣にしよう。1日1ページ。おこった出来事を書き出してみよう。
そのなかで、うまくいったこと、改善できること、辞めた方がいいことを書き出してみよう。成功や失敗に再現性があるなら、同じシチュエーションに立った時、どうすればよかったのか、どのように行動を変えればよかったのかを振り返ろう。学習とは文字を読むことじゃない。学習の前後で行動が変わることだ。本を1冊読んで、何も行動が変わっていなければ、あなたはなにも学習していない。
知識、勉強だって同様だ。きっとあなたの職場には、おなじ業務の先輩社員がいるはずだ。
その担当業務について、20冊でも本を読めば、知識量だけで言えば上位10%には入れるだろう。1週間で1冊。5ヶ月あれば知識で上位10%に入れる。あとは本屋かAmazonに飛ぶだけだ。
ある日、先輩社員が終電を逃して家に泊まりにきた。当然、コンビニでビールでも買って、ちょっとした武勇伝でも聞きながら、楽しくおしゃべりするものだと思っていた。が、その先輩社員は家にあがるなり、バックをおろして本を読み始めた。なんて空気が読めないんだろう。なんて愛想がないんだろう。数秒そう思ったが、その人は単にチームの成果にコミットメントしているだけだった。
1割の努力ができないなら、いますぐロック・リーに学んだほうがいい。
8.モチベーションの奴隷から脱出する
むかし「新規事業をまかせるならどんな人ですか」と、ある経営者に聞いたことがある。
返ってきた答えは「モチベーションに左右されない人」だった。
自走できるということは大事だ。ただ、それは粗い業務を完遂できるアタマも重要だが、それ以上にココロの方が大事かもしれない。
ニンジンをぶら下げられないと頑張れないなら、ベンチャーで働くにはマインドを切り替えた方がいい。なぜなら、ベンチャーにはあなたを励まし続けてくれるマネージャーがいないことが多い。
たしかに生活は大切だ。最低限の年収も必要だろう。なんなら傷つきたくなし、楽しく日々を過ごしたい。誰だってそうだ。
ただ、金銭報酬や、人間関係、褒められたり叱られたりの感情に、自分が支配されすぎてしまっているなら、それは気をつけた方がいい。
そういったときは偉大なリーダーに学ぼう。そう麦わら帽子の船長みたいな人だ。その船長には偉大な野望がある。そのせいで毎日が試練の連続だ。ただ、年収が上がらないからといって(懸賞金があがることは嬉しい)、仲間と喧嘩して別れたからといって、絶対に夢は叶えられないと馬鹿にされたからといって、彼のモチベーションは下がらないだろう。
確かに大きく傷ついて挫折することもあるだろう。それでも大きくなって2年後に戻ってくるだけだ。
偉大なリーダーは自身のモチベーションを支配する。ベンチャーで新しいことを任せるなら、そんなメンタリティをもった人だ。
モチベーションの奴隷から逃れたいなら、目の前の仕事を好きになることだ。イチローが野球を続けていたのは、野球そのものが好きだからだ。
たしかに、目の前のあなたの仕事は、あなたが望んだものじゃないかもしれない。ただ、その仕事についてまだ何も知らないのに、その仕事をつまらないと決めつけるのはもったいない。
世の中にはバッタを倒しにアフリカにいく人もいれば、他人のお尻の穴の位置を調べ続けることに人生を捧げた人もいる。
きっとあなたがつまらないと言ったその仕事に、生涯を捧げるくらいの気概で取り組んでいる人がいるだろう。まずはその人について調べたらいい。
仕事そのものが面白くなったら、限りなく勝利は近い。とある企業の経営者から言われたことがある「死亡説が流れるくらい、仕事にのめり込んだ方がいい」と。
9.仕事の高度をあげる。第二次成長期を目指して
ベンチャーで働いていて、3年ほどすると転職を考える人が多い。
はじめは何もかもが新しいことだらけで、生き残ることに必死。ただそれが、だんだんと自分の役割を全うできるようになって、新しい学びがなくなってきた。それなら転職しよう、というわけだ。
ただ考えてみて欲しい、上が詰まっている組織ならまだしも、既存業務に慣れることなんて、どこの組織にいっても再現する。そんなときは高度を上げてみよう。高度を上げられないなら、あなたのキャリアは一兵卒で終わってしまうかもしれない。
組織というのは円錐状のようなかたちになっている。円錐のトップはCEOだ。それが下にいけばいくほど、業務は具体的に細分化・専門化されていく。あなたが今の高さに慣れたのならば、それは高度を上げる好機かもしれない。
セールスメンバーなら、マネージャー。マネージャーならセールス部長。セールス部長なら事業部長というように、円錐の上に向かって物事の捉え方を変えてみるといい。
とある優秀なセールスパーソンがいた。社長賞もMVPも沢山もらった。ただ、それで終わってしまったのなら、ただの優秀な営業メンバーだ。その人が偉大だったのは、そこから自分より優秀じゃない人でも、自分と同じような成果を上げられるような仕組みを構築したことだ。そして、それが終わったあとに、重要だが成果の上がっていない部署の立て直しのミッションを直談判して獲得したことだ。高度をあげれば、新しい課題が見えてくる。
目の前の課題だけを解決できる人と、課題を自ら設定してトライできる人。ベンチャーの経営者の右腕になる人は、後者のような人だ。
成長に行き詰まったと感じたなら、人事や経営者に素直に相談してみたらいい。仕事の目線を上げたいので、もっと沢山仕事をくださいと。
大抵の場合は喜んでお土産をくれるはずだ。いきなりタイトルは貰えないかもしれないが、自身で勝手にその肩書を持ったつもりで仕事をしてみたら、判断基準は変わってくるかもしれない。
「自分が経営者だったらこうする」それが行き過ぎた結果として社長業まで交代した経営者も知っている。
10.コミットメントする
最後に捧げるメッセージはこうだ。会社、事業にコミットメントしよう。
あなた自身のことはいったん置いておいて、会社・事業にあなたのキャリアをオールインしてみよう。
なにも一生を捧げろ、心臓を捧げろと言っている訳じゃない。ただコミットメントすることで生まれる力もある。何も捨てることができない人には、何も変えることはできない。
世間には小賢い人が多い。わからない将来に予測をたてて、なにかにつけてリスクを理屈を引っ張り、やらない理由に一所懸命になっている人が多い。
ただスキルがあって能力がある人はいくらでも採用してこれる。本当に経営者が必要としているのは、なにがなんでも会社・事業を大きくしようと、変幻自在に組織に貢献できる人だ。紆余曲折ある会社の歴史を一緒に過ごしてくれる人だ。
そういった人は貴重だ。勝ち馬に乗りたい人は多い。ただ、HARD THINGSを乗り越えてくれる人はなかな見つからない。
たしかに一昔前に比べたら、転職しやすい環境になった。スキルや経験も可視化されるようになった。だからこそ、不確実な状況下で腹をくくれる人の希少性は高まっている。
とあるベンチャーのCFOがいた。素晴らしい経営チームだった。ただ、最終的にはM&A・事業売却という結果となった。
そのCFOは人の何倍も働いた。CFOと呼ぶにはあまりにも泥臭い仕事もやっていた。それが組織に必要だったからだ。
そして、最後の結末まで組織を見届けた。そういった人材は貴重だ。起業家・経営者はそれがわかっている。その人は、後に上場企業のCFOとして雇用された。
期限を設けてコミットメントしてみよう。なんなら経営チームに伝えてみるといい。
「この3年、絶対コミットメントする。だから、上場したら辞めてしまうんじゃないかと気を使ったり、余計な心配をして欲しくない。あなたと一緒に会社を大きくする覚悟がある、だから何でもやる」と。
きっと仕事は3倍くらいに増えるだろう。ただ、それよりもあなたの仕事は楽しくなる。そして、あなたのキャリアはより良いものになるはずだ。
さて、長々と書いてしまったが、新しいことをするには勇気が必要だ。ただ、やりはじめることで勇気が湧いてくることもある。まずは何か一つはじめてみよう。とにかく行動に移すことだ。
またもや、こんな長い文章に付き合ってくれたあなたを讃えたい。
ようこそ、狂気とカオスの世界へ!
Bon Voyage!ベンチャーでの良い旅路を。
参考図書
・『入社1年目の教科書』/ 岩瀬 大輔 著
・『自意識(アイデンティティ)と創り出す思考』/ ロバート・フリッツ 、ウェイン・S・アンダーセン 著
・『MBA流 チームが勝手に結果を出す仕組み』/ 若林 計志 著
・『人を伸ばす力―内発と自律のすすめ』/ エドワード・L. デシ 著
・『「経験学習」入門』/ 松尾 睦 著
・『達人のサイエンス―真の自己成長のために』/ ジョージ レナード 著
・『マッキンゼー流 最高の社風のつくり方』/ ニール・ドシ 、リンゼイ・マクレガー 著
・『キャリア・ダイナミクス』/ エドガー・H. シャイン 著